JavaScript プリミティブ型 (基本データ型)

プリミティブ型とラッパーオブジェクト

数値(number)・文字列(string)・真偽値(boolean) のプリミティブ型(基本型)には それぞれNumber, String, Booleanという対応するオブジェクト型(ラッパーオブジェクト)が存在する。 (Values, variables, and literals)

プリミティブ型 ラッパーオブジェクト
数値 number Number
文字列 string String
真偽値 boolean Boolean

プリミティブ型からラッパーオブジェクトへの変換は Objectを使って行うことができる。:

var obj = new Object(1); //newは省略可能
alert(obj instanceof Number); //true

ただ、ラッパーオブジェクトのメソッドやプロパティ(文字列のlengthなど)はプリミティブ型からも利用可能なので、 ラッパーオブジェクトを拡張して新しいメソッドを追加する場合を除いて、 ラッパーオブジェクトを意識して利用するケースはそれほどないと思う。 型変換のための関数として利用するのが、ラッパーオブジェクトの一番の使い道になるような気がする。 なおラッパーオブジェクトからプリミティブ型への変換を行うには、 各ラッパーオブジェクトが持つvalueOfメソッドを利用すればよい。:

var i = new Number(0);
alert(typeof i); //object
alert(typeof i.valueOf()); //number

ラッパーオブジェクトのインスタンスと論理値

ラッパーオブジェクトのインスタンスはすべて true として解釈される (参考: Boolean - MDN)。 そのため、0false, '' (空文字列) が false として扱われるにも関わらず、 それをラップしたインスタンスは true として取り扱われる。 これはすこし直感に反しているので、注意が必要な挙動。

//!!(否定2回)でbooleanへの変換が行える
var b, i, s;
b = false;
i = 0;
s = '';
alert(!!b); //false
alert(!!i); //false
alert(!!s); //false
b = new Boolean(false);
i = new Number(0);
s = new String('');
alert(!!b); //true
alert(!!i); //true
alert(!!s); //true
// Booleanはfalseに対応するラッパーオブジェクトをtrueと解釈する
alert(new Boolean(new Boolean(false))); //true
alert(new Boolean(Boolean(false))); //false

型変換

ラッパーオブジェクトは関数として利用すると、 対応するプリミティブ型へのコンバーターとして機能する:

var n = Number('123');
alert(typeof n); // number
alert(n instanceof Number); // false

また、newをつけて呼び出すと、ラッパーオブジェクトのインスタンスが作成される。(あまりこれを使うことはないと思うが):

var n = new Number('123');
alert(typeof n); // object
alert(n instanceof Number); // true

ラッパーオブジェクトの演算

ラッパーオブジェクトのインスタンスを演算子で処理した結果は、 プリミティブ型となる。:

var x = new Number(3);
var y = new Number(4);
alert(typeof x); // object
alert(typeof x + y); // number

ラッパーオブジェクトの関数の演算結果は基本的にプリミティブ型が返る。:

var s = new String('Hello world');
alert(typeof s); // object
alert(typeof s.substring(0, 5)); // string

このように何かしら処理を行うと、結果は簡単にプリミティブ型になってしまうので new String('Hello world') のようにして積極的にラッパーオブジェクトを利用するのは避けた方がよさそうである。

プリミティブ型のプロパティへのアクセス

プリミティブ型の値に対して、x.keyx['key'] でプロパティのアクセスを行うと 対応するラッパーオブジェクトへ自動変換されてからプロパティのアクセスが実行される(FirefoxのString.lengthなど)。

そのため、ラッパーオブジェクトのメソッドやプロパティはプリミティブ型からも利用可能。 またラッパーオブジェクトの prototype を拡張しておけば、プリミティブ型からも利用することができる。

Boolean.prototype.invert = function() {
  /*
   * thisはラッパーオブジェクトBooleanのインスタンスであり、
   * ラッパークラスのインスタンスは常にtrueとして扱われることに注意
   * (つまりreturn !this;とすると常にfalseを返す関数となってしまう。)
   */
  return !this.valueOf();
};
var t = true;
var f = false;
alert(t.invert()); // false
alert(f.invert()); // true

またプロパティに値を代入しても、プリミティブ型に対しては反映されない。:

var i = 0;
i.x = 'i.x';
alert(i.x); // undefined
var j = 0;
j.x = 'j.x';
alert(j.x); // j.x

Google Chromeの場合

Firefox, Safariは上のように動いていると思って問題なさそうだが、Chromeは若干動作が違うようである。

Object.prototype.getType = function() {
  return typeof this;
};
var i = 0;
alert(i.getType());

上で述べたように、プリミティブ型(number)のプロパティを参照すると、対応するラッパーオブジェクト(Number)に変換され、 そこからprototypeをたどってgetTypeを呼び出しているとすれば、最後の文は:

alert(new Number(i).getType());

と等価となり this はラッパーオブジェクトのインスタンスになるはずなので、 実行結果は "object" となるはずである。 実際、このスクリプトを実行するとSafari, Firefoxでは "object" が表示される。

しかしChromeでは "number" が表示される。 つまりChromeではラッパーオブジェクトへの変換は行われず、thisには元々のプリミティブ型がそのまま格納されるようである。 なお、プリミティブ型のプロパティに値の代入を行っても反映されないのはChromeでも同じである。

falseとして扱われる値

if, whileなどの条件式や、!演算にfalseとして解釈される値:

false
0, -0
NaN
''
null
undefined

new Boolean(false)や、new Number(0)はfalseとしては扱われないので注意が必要

最終更新: 2014/3/24